相澤染工場

“板の下が藍甕になっているので気をつけて下さいね”
その数に驚きました。
相澤染工場の藍甕の数は他と比べても多いそうで、足元に気をつけながら歩きました。床は一面、長年で染み込んだ藍に染まっています。

藍甕(あいがめ)

それぞれの甕は濃さが違っていて、基本的にはまず薄いもので染めてから段々濃いもので染め重ねていく、というような使い分けをしているそうです。

相澤染工場

近づいてみると、土のような…独特の匂いがしました。
中央には泡が立っています。これは、藍液が還元しているからとのこと。

”藍”というのは、青い染料が取れる数種の植物の総称と、その植物から取れる青い染料の両方のことで、”藍”が取れる植物には青い色素”インディゴ”が含まれています。

もともとインディゴは水に溶けないので、そのままだと布などを染める染料として使えないのですが、還元させることで水に溶けるようになるそうです。

還元には、気温、湿度などさまざまなことが影響します。藍を管理するには、藍の機嫌を日々うかがいながら調性することのできる長年の経験と職人の技が必要です。

かき混ぜる

相澤染工場

”下に沈んでいる石灰などが上がってきて黄緑色に見えるんですよ”

染色が終わり蓋を閉める前には、こうして長い棒でかき混ぜて、調子を整えるそうです。全ての甕を撹拌(かくはん)するのはなかなかの力仕事です。

染める前に

相澤染工場

いよいよ染めに入ります。どんな色に染まっていくのかとても楽しみです。

今回は”hinode”のロゴの入ったハンカチを染色してもらいます。

糊をつけた綿布はそのままでは染まりにくいので、まずは浸透液につけます。
藍液に長くつけて濃く染めることもできるそうなのですが、それだと途中で糊が取れてしまうことがあるそうです。

また、”呉汁”という大豆をすり潰して濾したものも大豆に含まれるタンパク質の働きで染まりを良くする効果があり、呉汁をつけてから深みのある色に染めあげていく技法もあります。

そんな一手間も加わり美しい染物が生まれていきます。

藍甕へ

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ついに藍甕の中へ。

”縫い目の部分などは染まりにくいので・・・”

そう言って相澤さんは液の中で何度かハンカチを動かしていました。小さなハンカチでも布の素材や、使われている糸の素材などで染まり方が変わります。そんな素材の癖を確認しながら染めていきます。

出してすぐは…

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引き上げてすぐは、青でもなく藍液の深い藍色でもなく、青緑色をしています。

一目見ると余り染まっていなくて、まさか失敗?と思ってしまうほど。

もちろん失敗ではなく、不思議な事に、この状態から空気や水に含まれる酸素にふれて酸化することで藍色に発色していきます。

色が変わる!

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水で洗うと、みるみるうちに鮮やかに発色していきました。糊もとれてそこから白い模様が浮き出ています。

本当に一瞬で、水の中でぱっと色が変わる瞬間はとても気持ち良く、見ていてとても綺麗で感動しました。

綺麗に染まっています

相澤染工場

hinodeの文字とウロコ模様が綺麗に入り、深い藍色に染まっています。

”綺麗に染まりましたね!”

と伝えると、”そうですね。これなら大丈夫そうです。笑”

相澤さんは少しほっとされていました。

今回は私たちのために全体の工程を普段より短くして制作をしていただいていたので、出来上がるまで緊張していたそうです。

”濡れていると濃い色ですが、乾くと落ち着いた色になりますよ”

ここからまた色が変わるということで、最後の仕上がりも楽しみになりました。

その他の仕事道具

相澤染工場

しわにならないようにピンと張られた反物。染色されたあとは半纏に仕立てられます。11mもあって、仕事場いっぱいに広げられた様子は迫力がありました。

型彫をするための作業台

相澤染工場

相澤さんの作業台。横に長い形で、反物を広げたりできます。染色が終わった合間に、ここで型彫をされたりしているそうです。

呉汁を作るための大豆を擦り潰したもの

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”呉汁”を作るための大豆をすり潰したもの。

大豆に含まれるタンパク質が色の染まりを良くするということは、昔ながらの技法ながら理にかなっています。

古い釜

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両腕で一抱え以上ある大きな釜。昔からこれで模様をつけるための糊を煮ています。大切な仕事道具のひとつです。

干し

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晴れた日は、こうして藍染した反物を外で干しています。

伸子(しんし)という道具を生地に張って、たわんだりシワにならないようにします。ピンと張った藍色の反物がいくつもならんで干されている姿は気持ちの良いものでした。

完成

相澤染工場

様々な過程を経て、ハンカチが完成しました。型彫のhinodeの文字に感無量です。

乾くと確かに生活に馴染むような落ち着いた色合いの藍色に。

藍染めといえば、”染める”という印象が正直なところ強かったのですが、日々、藍甕の調整や管理、防染糊の作成、昔からの道具を使ったり手入れをしたりなど、染めるに至るまでの様々なことがすごく大事な要素なのだと感じました。

型彫りの制作も、高度な職人の技をみることができ、ハンカチの小さな丸の模様の一つ一つになお一層手仕事の魅力を感じます。

そういった過程を経るからこそ、あの深みのある藍色が出るのかもしれない。藍染めという作業の一端を垣間見て、そんなふうに思いました。